バジリカータの小さな聖地:アングローナ
2021年11月20日
みなさん、こんにちは!
南イタリアのバジリカータ州と聞くとどの都市を思い浮かべますか?
まずはサッシで知られるマテーラだと思います!
マテーラは2019年に欧州文化首都に選ばれたことを契機として、様々なモニュメントの修復を進めました。
欧州文化首都は、欧州の各都市が持つ文化的な価値をアピールしようと1985年に始まったEUの通年プロジェクトで毎年2ヵ国、2都市で開催しています。
古代遺跡のあるメタポント、イタリアの最も美しい村の1つに登録されたカステルメッツァーノ、州都ポテンツァを考えた方もいらっしゃるかもしれません。
私自身はバジリカータ州と聞くと、マテーラとアングローナという丘の上にある聖堂をすぐに思い浮かべます。
イオニア海から少し内陸に位置するアングローナの起源は古く、紀元前後には成立していました。
アングローナは司教座聖堂もありましたが、次第に衰退していき、隣接するトゥルシが栄え、司教座もトゥルシに移りました。
10世紀後半、トゥルシはビザンティン帝国のルカーニア地方の主要な都市となります。
一方、アングローナは1369年の火事をきっかけに住人がいなくなり、現在はマテーラ県の内陸にあるトゥルシに含まれています。
写真はトゥルシ近郊ラバターナのものですが、トゥルシ周辺は岩がちな印象があります(写真①)。
アングローナには、サンタ・マリア・ディ・アングローナ聖堂または、サンタ・マリア・レジーナ・ディ・アングローナの聖地、Santuario di Santa Maria Regina di Anglonaと呼ばれる聖堂が建ちます。かつてアングローナの司教座聖堂であった聖堂は、7~8世紀の聖堂を11~12世紀、13世紀に改築したものです。内部には12~13世紀の貴重な壁画(フレスコ)があります。
なぜ貴重かというと、比較的に規模の大きい壁画がよい状態で保存されており、壁画には主に旧約聖書の物語が何場面も描かれ、描き方も特徴的なためです。銘文はギリシャ語表記です。マテーラにも中世の壁画は残っていますが、残念ながら断片的なものが多いので、アングローナの壁画はバジリカータ州を代表する中世美術の作例となります。
アングローナに行って壁画を見たいと思っていましたが、運転免許証のない私が自力で到達することはできない場所なので、いつか機会があればと祈っていました。
幸運にも1回目は調査旅行、2回目は南イタリアのロマネスクを巡る旅行(私が案内役でした)で計2回訪れることができました!
車で丘を上がっていくと、サンタ・マリア・ディ・アングローナ聖堂がそびえ立っています。
聖堂建築はだいぶ削れてしまっているものの、かわいいロマネスク彫刻もあります!(写真④)
写真の壁画は旧約聖書の創世記に記された、ノアの息子たちの妻たちを描いています(写真⑤)。
優美な建築や壁画を頼りに、かつてこの地域で一番重要であった時の姿を想像してみましょう!