ミラノ スカラ座 ~Teatro alla Scala~

ミラノ スカラ座 ~Teatro alla Scala~

みなさま、こんばんは!
すっかり季節が廻り、冬本番。みなさま、お元気でお過ごしですか?

秋から年末にかけて、日本でも様々なクラシックの演奏会やコンサートが開かれ、多くの劇場が華やぎます。
今日はミラノ スカラ座のお話です。

12月になると、ミラノ スカラ座のシーズンが開幕。
スカラ座といえば、オペラの聖地、殿堂とも言われる、オペラ歌手にとって特別な劇場です。

 

 

ミラノのドゥオーモ広場からガレリアを抜けると現れる、レオナルド・ダ・ヴィンチ像。それと向かい合うようにして立っているのが、オペラの殿堂 スカラ座です。
もともとは、北イタリアがオーストリア統治下にあった時代にテアトロ・ドゥカーレという名で建てられましたが、1776年に火災により焼失。その後、オーストリア女帝、マリア・テレジアの承認を受け、改めて再建されました。新しい劇場は、以前サンタ・マリア・アッラ・スカラ教会があった場所に建設されたため、スカラ座と呼ばれるようになりました。

劇場の中は別世界。
歴代のスター歌手、巨匠たち、そして観劇に訪れた王族や貴族たちの残した威厳のようなものを感じます。

スカラ座のシーズン初日は、毎年必ず12月7日。ミラノの守護聖人、聖アンブロ―ジョの日(Sant’Ambrogio)であり、ミラノの祝日なのです。
プレミエとも呼ばれる初日は特に煌びやかで、ロングドレスやタキシード、正装に身を包んだ紳士淑女が溢れます。中には著名人、有名人たちの姿も。今年のシーズンはプッチーニ作曲『トスカ』で幕開けとのこと。プレミエ公演はテレビ放送もされ、注目の的です。

さて…ここからはちょっと庶民的なお話。

イタリア留学時代、フィレンツェに住んでいた私は、時々勉強のためにスカラ座へもオペラ観劇に出掛けていました。
スカラ座のチケットはいつも人気で完売、もしくは大変な高額です。
豪華なドレスよりも本物の声を求めて、音楽院の学生や留学生たちのお目当ては、公演の当日に発売される天井桟敷席です。実は天井桟敷の当日券、20€程度という破格の価格で観劇できるため大人気。また、何十年もの間この天井桟敷からスカラ座の公演を観てきた耳の肥えたミラネーゼたち、まさに”天井桟敷のベテラン”が居るほどです。(彼らの耳はごまかせず、納得できない演奏に容赦なくブーイングが飛ぶのも、この桟敷席からだったりするのです…!!)

140席ほどの桟敷席を手に入れるためには、朝早くから劇場のチケット売り場に並ばなければならず、早朝から人々が列を成します。
冬はとても寒いミラノ、まだ薄暗い中列に並んでいると、色々な声が聞こえます。桟敷席のベテランたちが最近の公演や劇場を講評している声、親子連れが今夜の演目について話す声、観光客たちの外国語…。13時頃までただひたすら待ち、オープンしたら窓口で順番に自分の名前を言ってリストに入れてもらいます。そして、次の点呼の17時まで食事をしたり着替えに帰ったりして過ごし、17時になったらそれぞれ名前を呼ばれて整理券を受取り、その後、無事にチケットを購入出来る、という流れです。まさに一日がかり!!

私も何度もこの行列を体験しました。
列に並んでいたヴァイオリ二スタと意気投合し、二度目の点呼までの間に一緒に食事に行ったり、たまたま席が隣になった”桟敷席のベテラン”のシニョーラが昔のスカラ座について話してくれたりと、素敵な出会いもありました。そのシニョーラが『私は60年以上スカラの音を聴き続けている、生粋のミラネーゼよ!』と言った誇らしげな様子がとても素敵で、あぁ、オペラは彼らが愛し誇る大切な文化なのだなと、改めて実感した瞬間でした。シニョーラとはその日の歌手の演奏についても語り合い、楽しい観劇となりました。

桟敷席へ上がる階段の壁には、古くからの公演ポスターが貼ってあります。
往年のオペラスターたちの名前がずらりと並び、それを見るだけでもどれだけのドラマがここで生まれたのだろうかとドキドキします。

ドレスアップしてゴージャスに観劇するのも最高の経験ですが、こんな出会いがある天井桟敷も活気があって素敵です。
劇場のシーズン中にミラノをご旅行された際は、スカラ座で素敵な時間を過ごすのはいかがでしょうか♪
公演は観られない、という方は、舞台衣装や楽譜などが展示された博物館を見学するだけでも、つかの間夢の時間が味わえます。
ぜひ一度、イタリアが愛し誇るオペラの世界を体験されてみてください♪